砂糖堕ちハナエちゃんのお話 IFルート「素面ナツさんのお話(仮)」
砂糖堕ちハナエちゃんの人※この物語はトリオ過去編氏の「ノンシュガー・サマー」、大石リトリー氏の「ユメの狂奏曲」をベースにした三次創作になります。
両作品から描写や台詞、世界観やキャラ設定を一部お借りした上、砂糖堕ちハナエちゃんの世界に合わせてアレンジしています。
トリオ過去編氏の「ノンシュガー・サマー」
大石リトリー氏の「ユメの狂奏曲」
このお話は砂糖堕ちハナエちゃんの世界が舞台ですが、筆者が書いている砂糖堕ちハナエちゃんのお話(仮)シリーズとは別時空のパラレルワールド世界でのお話になります。
砂糖堕ちハナエちゃん本編とは繋がっておらず一部世界設定等に差異がございます。
『は、放せっ!』
『いい加減にしなさいよナツ、歯医者を怖がる子供じゃあるまいし』
『ナツちゃん、ハナエちゃんの診察は優しいから怖くないよ?』
『い、嫌だ!私は働かないぞっっ!!』
『ナツ、あんたそれキャラ違うでしょ』
仕事をしていると執務室の外が何やら賑やかな様子です。
扉の向こうから響く聞き覚えのある懐かしい声に私は椅子から立ち上がると執務室のドアをゆっくりと開けました。
「あっ!ハナエちゃん!」
ドアの向こうには4人の元トリニティの生徒さんがいました。最初に私に気づいたのは栗村アイリさんです。
「ハナエ、約束通り連れて来たよ」
「ごめんハナエ、うちのナツが迷惑ばかりかけて」
ぶっきらぼうに話すのは杏山カズサさん、と申し訳なさそうに話すのは伊原木ヨシミさん。そしてその二人の間に挟まって捕らえられてるのが――。
「お待ちしていましたよ、ナツさん」
「ひぃっ!?」
私が微笑むとひきつった様な表情をする柚鳥ナツさんが居たのでした。
アビドスイーツ団――、かつて放課後スイーツ部と呼ばれていたトリニティの目立たない小さな部活動の部がアビドスに移ってきた際今の名称になりました。
特にこれと言って役割や権限があるわけでは無いのですが、ハナコ様曰く「スイーツ団のような身軽でフットワークの軽い小さなグループを作っておくと色々便利なんですよ♡」だそうで、アビドス自治区内で砂漠の砂糖の広報活動や他の部署のお手伝いなどをしてくださっています。
百夜堂での新作スイーツのレビューや宣伝、ハルナさんの美食研究会やジュリさんの給食部での新作メニューの開発補助など色々な部署で働いてくださる目立たないけど縁の下の力持ち的な存在になりました。
さらには音楽の才能も皆さん持っているらしくA.S.S.R.(アビドスサンドシュガーラッシュ)というバンドを立ち上げて、先日のアビドス高校本校舎復旧記念コンサート in 生徒会の谷ではヒナ様とのコラボセッションを敢行し大盛況となったのも記憶に新しいです。
奇しくも私と同じ学校出身で同じ学年なスイーツ団の皆さんですが何故かナツさんだけは診察記録がない事に気が付きました。
アイリさんやヨシミさんやカズサさんは何度も診察を受けててちゃんとカルテが存在して居るのですが、いつも一緒に居るはずのナツさんのだけカルテが存在していませんでした。
ナツさんだけを見落としてしまうなんて医療従事者失格だなと自分を恥じながら改めてナツさんの診察をしようとしたのですが肝心のナツさんに何度も逃げられてしまい困り果てていて今回他のスイーツ団のみなさんに協力していただいたのでした。
「まっ、待ってくれ!本当に私は何処も悪くないんだ!!」
「何言ってんのよ。ハナエの診察受けずに砂漠の砂糖摂取するから体壊すんでしょ?」
「この間のヒナ様とのセッション、ナツだけ異様なくらいへばってたでしょ。ちゃんと身体に合った純度の砂糖とってんの?」
「ナツちゃん、ハナエちゃんに診て貰った方が絶対に良いよ。身体も良くなって砂漠の砂糖もスイーツももっと美味しく感じられるよ」
スイーツ団の皆さんに手伝ってもらってナツさんを診察用ベットに寝かします。
「では、ナツさんのお身体を診させていただきますね。皆さんはナツさんが暴れない様に押さえててくださいね」
「「「了解!!」」」
「うっうわあああああ~~~!!」
オーバーなまでに怯えるナツさんに違和感を抱きつつナツさんの身体に手を翳した時でした。
「えっ……!?」
ナツさんの身体に張り巡らされている砂漠の砂糖の因子の流れを診ようとして、砂漠の砂糖の因子の流れが全く見えない事に気づいたのです。
「ハナエちゃん…どうしたの?」
「ちょっとハナエ、何そんな怖い顔してるのよ」
アイリさんとヨシミさんが私を不安そうな顔で覗いてます。
「あの……ナツさん……もしかして――」
私の中に浮かんだ信じられない予想を口に出そうとした時でした。
バァアアアンッッ!!
「ハナエちゃんっ!!」
「ホ、ホシノ様っ!?!?」
ドアを蹴り破るようにしてホシノ様が執務室へと飛び込んできたのです。
ホシノ様は肩で大きく息をしながら私達を数度眺めまわすと、
「うへぇ~良かった。どうやら間に合ったみたいだね~」
何か安心した表情を浮かべてこちらへとやってきました。
「あの……ホシノ様……実は……」
「はい、ハナエちゃんストップだよ~」
喋りかけた私の口に人差し指を押し付けるホシノ様。
「アイリちゃん達ごめんね~。これからおじさん、ハナエちゃんとナツちゃんの三人で大事なお話あるからそっちの三人はしばらく席外してくれないかな~~?」
「でもっっ!!」
「ハイ、コレおじさんからのプレゼントだよ~」
抗議の声をあげようとしたヨシミさん達にホシノ様はポケットから大きな飴玉を取り出しそれぞれの口へと押し込みます。
「んっぐっ!?」
「これはね、今度発売される新しい砂漠の砂糖の純正糖飴の試作品。特別に食べさせてあげる。現行品よりも純度が10%上がってるからたまらないでしょ?」
クチュクチュと口の中の飴を舌で転がし染み出した甘味を飲み込むと三人は蕩けた表情になってしまいました。
「うん、良い感じだね。じゃあナツちゃんを除くアビドスイーツ団、回れ右!救護部棟の外まで前ぇ~進め~!いっちに、いっちに、いっちに――」
ホシノ様の合図に合わせてリズミカルに行進しながら出て行くアイリさん達を私はただ唖然として見送りました。
「――うん。もう大丈夫そうだね~」
救護部棟どころかアビドス高校の敷地外へと歩いて行くスイーツ団の3人の小さくなっていく後ろ姿を窓から眺めていたホシノ様が振り返り呟きます。
「あの……ホシノ様…」
「うん、ハナエちゃんの思ってる通りだよ。ナツちゃん、キミ、"砂漠の砂糖未摂取(シラフ)"だね」
「――ッ!!!!」
表情が一気に強張るとナツさんは咄嗟に診察用ベッド脇の荷物置きにおいてあったSMGを掴み構えようとしますが――。
ダダンッッ!!!
「ギャアッッ」
表情一つ変える事も身体を揺らす事も無く、目に見えない速さで一瞬で取り出し構えた拳銃――ホシノ様のSGとは別に所持している自動拳銃――で素早くナツさんの手を撃ち抜きSMGを吹き飛ばしました。
「うんうん……良いね~良いね~その瞳ぃ~。ナツちゃんもそんな表情できるんだぁ~、おじさん知らなかったよぉ~」
そして一瞬でナツさんに飛び掛かるように移動すると額に拳銃の銃口を押しつけ、そのまま力いっぱいベッドへと倒し抑え込みます。
「おじさんさぁ~ホントガッカリしたんだよぉ~。まさかカズサちゃんが砂糖の誘惑に負けちゃうなんて。てっきりおじさんに喰い付いて来るのカズサちゃんだとばかり思ってたからさぁ~」
「でもでもぉ~、これで安心したよ。カズサちゃんの代わりはナツちゃんがしてくれるんだね~。おじさんも張り合いが出てヤる気出てきたよぉ~」
「うぐぅ…返せ……返してよ……」
「うん…?」
「私の仲間を…カズサを…アイリを…ヨシミを返せ…スイーツ部を返せ……」
眼に涙をいっぱいに溜めながら呻くようにナツさんが呟きます。
「それはナツちゃん次第だね~。今はだめだけど…そうだね、砂祭りが終わったら返してあげるよ……。但し、自力で取り返しに来ること、おじさんを倒す事。それが条件。今のよわよわざこざこナツちゃんじゃ、取り返してもスイーツ団の皆は浮かばれないからね」
「ううっ…」
「それまでしっかり爪と牙を研いで鍛えておくんだね。楽しみにしてるよナツちゃん♪」
ダンッッ!!
「ぎゃあっ」
そのまま額に拳銃を一発撃ち込まれナツさんは意識を失ってしまいました。
「……さて、ハナエちゃん」
「はっ、はいっ!!」
「今見て聞いた通り、ナツちゃんは"このまま"にしておいてね。ミヤコちゃんと同じ"特別患者"扱いでよろしくぅ~」
それはミヤコさんと同様、今後も砂漠の砂糖を一切摂取させないようにすると言う意味です。
「ホシノ様……あの本当に良いのですか?」
「うん構わないよ。おじさん、嫌いな物を無理矢理口に押し込んで食べさせるの絶対にさせたくないからね。砂漠の砂糖は自分から好きになって自分の意志で食べてこそ、美味しいし、おじさん達も作り甲斐があるからね」
それに――、とホシノ様がニヤリと普段はされないタイプの笑みを浮かべます。
「ナツちゃんの演技凄かったでしょ?ハナエちゃんですらナツちゃんが診察回避してたの気づかなかったでしょ?おじさんね、周囲が皆、砂糖の狂人の中、必死に狂人の振りをしながら素面を護ろうするナツちゃんの姿を眺めるの好きなんだ。可愛いよねっふふっ」
ホシノ様の意外な一面が垣間見れて私が反応に困ってると、ホシノ様は少し微笑み窓辺に立ちました。
「砂上の楼閣」
「さじょうのろうかく……ですか?」
私が訪ねるとホシノ様が頷き話を続けてくださいます。
「砂の上にどんだけ豪華絢爛な立派な建物を立てても土台が砂だと、些細な事であっけなく崩れて無くなってしまうって意味。まさに今のおじさん達やアビドスにピッタリだと思わない?」
「えっと……」
「うんうん、あまり気にしなくて良いからね。それでね、ナツちゃんはそんな立派な砂上の楼閣(アビドス)を崩し倒す、小さな虫のひとかみになりたんだってさ。たった一つの取るに足らないひとかみでもそこから砂は一気に崩れ出しやがて上の建物も倒れてしまうんだよ、ナツちゃんでもその気になれば私達を倒せる存在になるんだ」
「もちろんそんな事はさせないよ。脆く崩れやすい砂だってしっかり押し固めてメンテすれば丈夫だしね。まぁ…慢心せず初心を忘れず頑張ろうってことだよ♪」
「は…はい…何となく?わかったような気がします!!」
「うんうん、じゃあそう言う事であとはよろしく~」
大きく伸びをするとホシノ様はそのまま出て行かれました。
「あれ?これは何でしょうか?」
ホシノ様を見送り、ナツさんの治療を済ませて執務机に戻ったところでいつの間にかボイスレコーダーが置いてあることに気が付きました。
それはまるで再生して音声を聞いてくれと言わんばかりに電源が入り音声再生モードで一時停止してあり、私は徐に再生ボタンを押してみるのでした。
『私ではどうあがいてもせいぜい小さな虫のひとかみにしかならないだろう、でも良いんだ。』
『砂漠の砂の上に建つアビドスと言う巨大な城、それが取るに足りない小さな虫のひとかみで崩れてしまう』
『それは中々ロックだと思わないかい?』
(おわり)
-----------------(以下、没ネタ、理不尽かつ雑なミヤコ虐待とキャラ崩壊シーンがあります閲覧注意)-------------------------------------------------------
※コピペミスで後半文章が消失しているため途中切れになってます。
「ナツちゃんの演技凄かったでしょ?ハナエちゃんですらナツちゃんが診察回避してたの気づかなかったでしょ?おじさんね、周囲が皆、砂糖の狂人の中、必死に狂人の振りをしながら素面を護ろうするナツちゃんの姿を眺めるの好きなんだ。可愛いよねっふふっ」
ホシノ様の意外な一面が垣間見れて私が反応に困ってるとコンコンとドアがノックされました。
『RABBIT小隊、月雪ミヤコです』
どうしてミヤコさんが来たのか不思議に思っていると、
「ああ、来た来た。おじさんが呼んだんだよ。ミヤコちゃん~入って来て~」
とホシノ様が仰りました。失礼します、と声が聞こえドアが開くとイマイチ状況が理解できない様子のミヤコさんが入ってこられました。
「あの、ホシノさん。緊急の用件とはなんでしょうか?それもハナエちゃんの救護部執務室に来いと――」
ズドンッッ!!!
「ぐぎゃぁっ!?!?」
「み、ミヤコさんっ!?」
突然ホシノ様が入室して来たミヤコさんの腹部目掛けて愛用のSGを撃ち込みます。ホシノ様の神秘効果乗った強烈な一撃でミヤコさんは吹き飛ばされ壁へ叩きつけられました。
ホシノ様は壁にもたれるように崩れ落ちたミヤコさんの髪を乱暴に掴んで持ち上げると腹部にSGの銃口をめり込ませながら言います。
「ミヤコちゃんさぁ~ひどいよ。なんでおじさんに嘘ついちゃうのかなぁ~」
「う…そ……なんて……ついてま…せん…」
ズドンッッ!!ズドンッッ!!
「アガッ!?ギャアアッ!!」
「嘘ついてるだろっっ!!!お前っ!!ナツちゃんがシラフな事しっててっっ!!!何故っっ!!私に報告しなかったっっ!!」
「ううっ…!!」
「私言ったよね!!砂糖嫌いな子には絶対無理矢理飲ませないって!!ちゃんと理由あってアビドス来たなら保護してあげるって言ったよなっっ!!!」
「それから私との約束も破ったなっっ!!隠し事はしない、ミヤコちゃんの心の内面以外は全て私に報告すると!!」
「あぐっ…」
「これはお前の心の内面の話かっ!!違うだろっっ!!!お前がやってるのは上官に対する組織に対する反逆行為に近い事なんだよっっ!!」
「私達に相談するどころか対策委員会(みんな)の食料や医薬品を横領して柚鳥ナツへ渡していただろう!!!」
「わ…わたしは…」
ズドンッッ!!
「ギャアヒッ!?」
「黙れクソウサギっっ!!横領はどうでも良いんだよっッ!!何故一言私に相談しなかったっ!!!一言言えば快諾したのにさぁっ!!お前らの学校では習わなかったのか報連相!!報ッ!(ズドンッッ!!)連ッ!(ズドンッッ!!)相ッ!(ズドンッッ!!)」